漂泊の才能
「ジャック・ロンドン放浪記 (地球人ライブラリー (014))」 ジャック・ロンドン (小学館)
アメリカ大陸横断鉄道の黎明期に、列車にタダ乗りしては全米を股に掛ける放浪者群がいたという。その名をホーボー。
あっ、ホーボージュンっていうアウトドア・ライターがいるけど、語源はこれだったんですかね。(ほうぼう放浪するからかと…(^^;))
ジャック・ロンドンと言えば、「野性の呼び声」を始めとした作品をものした20世紀初頭のアメリカ文学の寵児。若い頃、彼もまたホーボーの一人だった、それもとびきり“優秀”な。
この本は、その時期のことを綴った自伝のようなものである。列車に潜り込むさまざまな手口や、車掌・制動手といった係員をいかに出し抜くか、行った先々での物乞いの上手なやり方…などのわくわくする冒険談。
もちろん、著者のように“優秀”なのもいれば、新米のうすのろのと揶揄されるような“できない”奴もいる。
なにしろ放浪ひとつ取ってもスケールが違うなぁと舌をまく部分がありつつ、誇り高き放浪者であっても、例えば平凡な労働者であっても、結局人生の成不成を分かつものは才能のあるなしなのよね、とちょっと空しくなる本でもある。
こういう本を読んで空しくならずに、漂泊の望みに取り憑かれちゃう人もいるに違いない。それまたひとつの才能ではあろう。