2003/06/17 火

荒野へ-INTO THE WILD-

荒野へ
荒野へ-INTO THE WILD- (ジョン・クラカワー/佐宗鈴夫訳) 集英社

ろくに装備も食物も持たずにアラスカの荒野へ単身分け入り、4カ月後に恐らく食中毒がもとで餓死した青年を描いたノンフィクション。

何ともショッキングな事件(事故)で、ニュースを聞いた人の評価は批判的、著者の筆も心なしか陰影に満ちているが、直前に接した人の話や日記から推察された本人の姿は妙にハッピーに見える。

この本は、「なぜ人は荒野や冒険を目指すのか?」を考えさせてくれる。危険な山や崖を目指す人、食うや食わずで芸術を志す人、ケガをおしてまで記録にこだわる人などを、他人はバカだなあとか理解できないよ、やめろよと言いがちだが、もとよりそこには他人の典範や理屈などの入り込む隙はない。行動をただ批判したり、ましてその心の中を詮索したり干渉したりするのはお門違いなのである。
本人がそうしたければ、それでいいのだ。

で、彼は荒野にジャック・ロンドンなどを持ち込み、読んでいたという。こんど読んでみよう。

2003/06/13 金

焚き火大全

焚き火大全
焚き火大全 (吉長成恭・関根秀樹他) 創森社

和光大学で焚き火学講座とか持ってる人らが編集した、“焚き火”の意味・動機から科学的解析、文化への反映、焚き火への想いまでを網羅する、まさに「大全」。ちょっと呆れる。

前半の「焚きつけや焚き木の分析」などは非常に興味深かったけど、後半は「旨いモノを食った人が書いた旨いモノのエッセー」みたいで面白くもなんともない。やっぱ焚き火は「自分の体験」そのものでなくっちゃね。

もっとも、そう言っちゃうと、あらゆる「学」は所詮はカリカチュアでしかないということに行き当たる。「純化して法則を知り、方向性を示す」学問的営みのためには意味があるのかも知れないけど、体験…個々の蓄積の前では、学は意味をなさない。焚き火の形を分類してどうしようっての、って感じである。

2003/06/13 金

魔頂チョモランマ

魔頂チョモランマ
魔頂チョモランマ (今井通子) 中公文庫

女性クライマーとして著名な同氏が隊長を務めた、冬季チョモランマ挑戦記。軽い凍傷騒ぎなどもありながら、書き方のせいなのか全体にのんびりした雰囲気が漂っているのは意外。
登山日誌みたいで読んで面白いとは言えないが、BC(ベースキャンプ)を張ってじっくり攻める「遠征隊方式」の登山作法がわかって興味深い。(近年は短時間で一気に頂上を落とす「アルパイン方式」が隆盛らしい)

2002/11/07 木

クライミング・フリー

クライミング・フリー―伝説を創る驚異の女性クライマー
クライミング・フリー (リン・ヒル/小西敦子訳) 光文社

女性でありながら(女性ゆえか?)フリークライミングの世界第一人者である著者の自省の記。多くの人が落ちて死ぬので、重苦しい雰囲気に満ちている。(カミさんは途中でやめたらしい(笑))

この人は「危険を冒して冬山に登りたがる人の気は知れない」と言っているが、冬山登山もフリークライミングも一緒では?とワタシは言いたい。

2002/11/05 火

アウトドア道具考―バックパッキングの世界

アウトドア道具考―バックパッキングの世界
アウトドア道具考―バックパッキングの世界 (村上宣寛) 春秋社

バックパッキング用品を「自分で買って(特定のメーカーに寄らず)客観的に使用評価する」というテーマそのものは好ましいんだけど、パワーと頑固さにあかせて歩きまわる著者の超!特殊事例なので、あまり参考にならないって感じ。。
モンベルやゴアテに対する“敵意”は笑える。

2002/05/08 水

日曜日の遊び方 ダッチ・オーヴン

日曜日の遊び方 ダッチ・オーヴン―煮る、焼く、炒める、蒸す、揚げる野外料理の決定版
日曜日の遊び方 ダッチ・オーヴン (菊池仁志) 雄鶏社

ダッチオーブンを日本に広めた著者による定本。その歴史や、代表的なレシピが載っている。これ一冊あればダッチオーブン遊びはおっけー。

2002/03/01 金

決定版雪崩学

決定版 雪崩学―雪山サバイバル 最新研究と事故分析
決定版雪崩学 (北海道雪崩事故防止研究会・編) 山と渓谷社

雪崩の起こるメカニズムや、対処法(と言っても雪崩に“立ち向かう”わけではないが)を網羅した、まさに決定版。雪崩は夜は起こらないとか、木が立て込んでいる場所は大丈夫とか、埋もれても抜け出せるとか、けっこう誤解も多いのである。
雪崩の前兆である「ワッフ」という雪の動く音、私は聞き覚えがあるような気がするのは気のせいか…。

2002/02/03 日

強力伝・孤島

強力伝・孤島
強力伝・孤島」 新田次郎 (新潮文庫)


八甲田山のついでに…というと語弊があるが、その昔マンガ化されたものを読んだことのある「強力伝」を読んでみたくなり、購入。

マンガはとにかく非常に力強く、そして何ともやりきれないような結末だった、ような記憶があった。そういう思い出的な記憶は、読み返してみると「な~んだこんなもんだったか」と思ってしまうことも多いのだが、この本に関しては、迫力ある筆致に印象を新たにした。50貫(約187kg)を背負って白馬岳に登る…だなんてなぁ。これも怖い怖い小説である(とは言え実在のモデルがいる)。

ちなみに、今調べてみたらマンガは池上遼一の手になるものだったようだ。懐かしいな。

2002/01/25 金

八甲田山死の彷徨

八甲田山死の彷徨
八甲田山死の彷徨 (新田次郎) 新潮文庫

2002年1月23日は、八甲田山大量遭難事故からちょうど100年目だそうな。
これは新田次郎が、もと気象庁予報官ならではの考察を交えながら遭難を小説化した実に怖い怖い本である。

その100年前、十分な知識も装備もないまま行軍訓練に入った歩兵第五連隊。昼は陽気の中重いソリをひっぱって、木綿の肌着に汗をかいたまま、記録的な大寒波の夜を迎えたらどうなるか。
歩兵たちは外套すら持たず、胸までの新雪の中でソリは当然埋もれ、握り飯は凍り付き、小便がしたくとも指は凍傷で動かず…冬山の恐ろしさをイヤというほど感じさせてくれる。
痛ましすぎ。

2001/03/01 木

最新雪崩学入門

最新雪崩学入門―雪山最大の危険から身を守るために
最新雪崩学入門 (北海道雪崩事故防止研究会・編) 山と渓谷社

決定版雪崩学」の前身。

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