「
ディエンビエンフー」 西島大介 (角川書店100%コミックス)
たまたまネットで1コマを見かけただけなんだけど、なぜか気になったので買ってみた。
今どきのキャラ風のかわいらしい絵柄。だが描かれている内容はもっぱら殺戮と血だ。
ベトナム戦争のさなか、従軍している日系人カメラマン・ミナミと、戦闘マシンとして鍛え上げられたベトナム人少女の淡い恋心が(とりあえず)お話の中心である。
(※引用は小学館版)
泥沼化するベトナム戦争の中で、すっかり狂気にとり憑かれている米兵たち。のほほんとそれにぶら下がっているミナミだけが、なぜか少女に殺されることなく生きながらえる。それはなぜなのか…?と問ううちに、夥しい死体が積み上げられていく。
それにしてもなぜいま、ベトナム戦争なのだろうか?
著者はベトナムの風俗や歴史に関心が強く、ベトナム戦争の構図にも詳しいようだ。そのベトナムのお話を通して人間や戦争の異常心理、不条理を描こうとしているのかも知れない。
一方、本の帯や雑誌のアオリコピーは「世界一かわいい、ベトナム戦争」とか「超絶ラブストーリー新連載!」といった具合だ。
お話の異常性に比して、ちと脳天気ではないか?
近ごろのマンガ雑誌(コミック誌、というべきか)を手に取ると、内容はひどいものだ。暴力とセックス、荒唐無稽な力や、シリアスな場面でも突然出てくるギャグ、現実とは乖離した「なんとなくなんとかなっちゃう」あり得ないユートピアばかりだ。
こんなものを読んでいたら、それこそどうにかなっちゃいそうだ。
否、既にどうかしている日本人がこういうものを求めているのか…。
この本の作者の抱いているモチーフが、上にも書いたような人間の矛盾を描き出すことにあるのか、それともご多分に漏れず単に暴力(血)の横溢を描きたいだけなのか、そのへんはよくわからない。
だが、今という時代(大衆)がだんだん、人の血や死を大ごとと考えなくなっているのを感じるのである。
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ところで「ディエンビエンフー」とはベトナムの地名で、ベトナムとフランスとの間で戦われた独立戦争の中で
最大の戦闘が行われた場所だという(独立戦争の背景には、旧日本軍も絡んでいる)。これは物語の10年ほど前のことである。
なんでベトナム戦争のお話にそのようなタイトルがついているのだろう。ベトナムの歴史の上で象徴的な場所だからか。それとも、冒頭で主人公の二人が爆死するシーンが既に描かれていることも考え合わせると、ひょっとするとこれは二人の物語ではなく、少女を鍛え上げている「バアちゃん」(その戦闘に参加した)のお話なのかも知れない。
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ちなみにオレが買ったのは角川書店版、最初に掲載された雑誌が休刊となったため未完で終わっている方である。
小学館の「
IKKI」とやらで再連載中であるほか、現在5巻まで単行本が出ているそうだ(どういうお話が進行しているかは不明)。
作者っていったいどんな人なんだ?と思って
写真を探してみてたまげた。
似てねー? 誰か(の若い頃)に…(^^;)。
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