前に読んだ本の続編。
2010年1月20日初版…つまり、「オバマ後」のアメリカをルポした内容になっている。
「チェンジ」は訪れているのか。
学生、若者と老人、病人、そしてあろうことか囚人までもが引き続き食い物にされている実態をもとに、その問いに答えようという本である。
大学を出れば、いい職業や安定した生活が手に入る…。
そう考えて、甘いコピー(誘い文句)が踊る民間の奨学金を利用したはいいが、ある日突然金利が吊り上げられたり貸し剥がしに遭ったりする。大学を卒業しても就職先などロクになく、雪だるま式に膨れあがった借金は、破産宣告しても、本人が死んでも追ってくる(法的な救済措置が存在しないらしい)。
なぜそんなことになっているかと言えば、もちろん儲け主義しかない教育金融業者が出現し、政府をカネと周到なロビー活動で突き動かして公的予算を削らせたり自分のみに都合のいい法律を作らせたりしているからだ…。
さらに戦慄さえ覚えるのは、スリーアウト法とかホームレスへの厳罰化などで逮捕・拘留者を増やし、極めて安価かつ忠誠度の高い労働力としてテレコムセンターなどのアウトソーシング市場に「売り渡している」という事実である…。
と、こんな調子の話が続く。なんとも恐るべき、“支配者階級”の欲望。
そしてターゲットは、貧困層やマイノリティばかりではなく、先日まで普通の生活を営んでいた中流層にまで及んでいく。
拝金国家・アメリカは本当に病んでいると思わせられる、本当にショッキングな内容である。
だが、前回のエントリにも書いたけど、これは必ずしも対岸の火事ではない。
小さな政府とか規制緩和、官から民へといったキーワードは日本にもじわりと近寄って来ていて、官僚独裁ニッポンに風穴を開けてくれると期待している向きはあるのではないか。
オレなんかもどちらかと言えばそっち方向だが、その向こうでほくそ笑んでいる人間がいないとも限らない。極端に走るとアメリカ並みの超不平等社会が口を開けて待っているかも知れないのだ。
どっちの世界がいいのか悪いのかという話ではなく、互いのチェック機能や、極端に振れないバランス感覚が重要なのだと思うが、極端に振れるのが近頃の世相なので、不安は尽きない。
で、アメリカの惨状に対し「市民の味方」オバマが颯爽と登場してチェンジが訪れるかと言えば、答えはNOなのである。
本のエピローグにこんなくだりがある。
「次の選挙ではどこを一番重視しますか?」
「選挙資金の出所です。オバマ選挙とその後の一年で一番学んだのはそこでした。この国では一票とは一有権者のことではなく、一ドル紙幣なんだってこと。この一年、税金が湯水のように使われた業界は、すべてあの選挙でトップ献金者リストに入っています」
富豪クリントンや共和党マケインを大統領選で破るほどのカネを出したのは誰か。イラク撤兵や医療保険制度改革が停滞(もしくは頓挫)しているのはなぜなのか。
耳触りのよい言葉のウラに何があるか、われわれもよく見極めなければならない。
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