Qのカクメイ
本来なら35年くらい前に読んでても不思議ではない本。
(読んだ気もしたけど読んでなかった(^^;))
もっとも、当時読んでも猟奇系サイドカルチャー小説くらいにしか思わなかったかも知れないので、結局本というのは「読んだ時が旬」でいいんじゃろうね。
(読んだ気もしたけど読んでなかった(^^;))
もっとも、当時読んでも猟奇系サイドカルチャー小説くらいにしか思わなかったかも知れないので、結局本というのは「読んだ時が旬」でいいんじゃろうね。
「スミヤキストQの冒険」 倉橋由美子 (講談社文芸文庫)
1970年の安保闘争の前年、國民(年若い学生が主だったろうが)がまだ政府フザケルナと怒る根性を持っていた頃に書かれた小説。
スミヤキ党の「密命」を帯びてある島に降り立ち、その島にある「感化院」に潜入したスミヤキストQ、の冒険譚、である。
密命とは、その島での低層階級である「雑役夫」や「院児」を組織して「院長」ら権力層を殲滅することらしいのだが、Qが自己の劣情や奇怪な登場人物たちに絡め取られ、モタモタしているうちに、却って自身が殲滅されそうになるという話である。
閉塞状況の中で行き場を失うということではカフカの「城」とか安部公房の「砂の女」などを思い出すが(ちゃんとは思い出せないが(^^;))、あちらの(確か)静謐と諦観の漂っていた世界とは異なって、こちらの世界はエネルギッシュに飛散する言葉の横溢で埋め尽くされている。饒舌なのだ。
その閉塞状況の中の闘いで描かれるのは、宗教であり、セックスであり、食人であり、差別であり、文学であり、ギャンブルであり、そして(虐げられた者のハケ口としての)革命的思想であり…といった人間の最暗部にうごめくドロドロしたもの、要するに現代社会の似姿なのである。
その頃…高度成長期の國民の心のありさまを映しとり、当時人気を博した(というより物議を醸した)小説のひとつであろうけれども、社会が本質的に内包する「閉塞状況」を描き出したという点では(舞台設定も登場人物たちの思考も基本的にはピンと来ないが)、今に通じる普遍性は持っているように思われた。
…なんつーことを考えていたら、他者による評論の形を借りたあとがきで著者に、
この物語からなんらかの意味を読み取ろうとするのは「旧人類インテリの悪い癖」
とバシっと言われてぎゃふんとなるのだが、一方その著者にして
本作は「ドン・キホーテ(Don Quixote)」や19世紀ヨーロッパの革命的秘密結社「カルボナーリ(炭焼党)」をモチーフとしている
…とも記述しており、著者自身の風刺精神と問題意識は明確なのである。
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