マタギの一代記
マタギ参考書シリーズ。
「第十四世マタギ―松橋時幸一代記」 甲斐崎 圭 (中公文庫)
これまで「参考書」を何冊か読んで来たが、主人公の娘さんがオレとほぼ同年代、という時代まで下って来た。
主人公の松橋時幸氏は昭和9年生まれの実在の人物で、この本はかれの幼少から壮年期までを小説仕立てで描いた、正調マタギ伝である。
おそらくは本人や周辺への綿密な取材に基づいて組み上げられたものであろう。掘り下げたのか膨らましたのか執筆の詳細は不明ながら、その生い立ち、先輩からの学び、クマとの渡り合い、時代との向き合い方など、その時々の心の動きまでを含めてたんねんに、迫真の筆致で描かれる。
時代の流れとともに失われるマタギの厳しいしきたりや矜持…といった構図は当然あるが、流れの中で諦めるばかりでなく、農業大学で学んだり、猟友会を組織したり、その中でハンターの啓蒙や技術向上に取り組んだりと、現在ある環境の中でよりよいあり方を求める前向きなものを見る気がした。
それもマタギ本人の感懐なのか著者の主張なのかはわからないが…。
松橋氏は現にお元気なのだろうかと思って調べて見ると、秋田県のWebサイト(「比立内」の項)で氏のプロファイルやマタギ用具が紹介されていたり、かのランディが氏に会いに行った話が出てきた。
仮に自分の生涯がこういう風に書かれたら、かなりこっ恥ずかしい気がするけどどうなんだろう(^^;)。
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