マタギのエピローグ
マタギ参考書シリーズ。
「マタギを生業にした人たち 」 野添憲治 (社会評論社)
…という書名だけど、書名から連想されるようなマタギ伝的な内容は一部で、大半は秋田・阿仁町根子に居を構えた著者の観察である。著者はフリーライターで、1カ月のうち10日ほどをそこで過ごしながら、土地の習俗や古老はじめ住む人との交流から得た知見を書き記す。主に1980年代中盤、つまり現代阿仁のルポであり、マタギの“血”こそ残っているが、その具体的な生活習慣はとうに失われた後の話である。
もっとも、面白かったのはやはり、かつてマタギだった古老からの聞き書きやインタビューの部分。中でもクマの習性やクマと渡り合った話であった。
(死んだフリもいいが、クマにひっくり返されても死んだフリをし続けられるくらい肝が据わっていなければダメだ、とかね…)
かれらの確かな記憶と、情景が浮かんでくるような話術に惹かれる。体を張った体験の深さあってのことだろう。
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