ちょっとマタギに憧れる
マタギ参考書シリーズ。
秋田出身で、角館を拠点としてマタギ関連の民俗を研究した著者が、昭和10~20年頃にかけて仙北郡・由利郡・北秋田郡あたりのマタギから聴取した貴重な内容が記されている。読み物ではなくて学術資料である。
著者没後に、残された原稿を書物としてまとめたもの(昭和44年刊)というだけあって読みやすいとは言えないが、秋田マタギの習俗や怪異談、クマ(ツキノワ)狩りの作法、雪崩に関する記述などには興味をそそられる。
中でも、お産や煙草などは「産火」と呼ばれ不吉とされたことや、鉄鍋のツル越しに飯を盛ってはならない、寒中に豆を煎ってはならない等の禁忌は、迷信とも先人の戒めともつかないことだが、そうした厳格なしきたりが受け継がれたところに自然への畏敬が感じられることである。
なお、1994年には増補版も出版されており、いずれも古書で入手できるようである。
「秋田マタギ聞書」 武藤鉄城 (慶友社)
秋田出身で、角館を拠点としてマタギ関連の民俗を研究した著者が、昭和10~20年頃にかけて仙北郡・由利郡・北秋田郡あたりのマタギから聴取した貴重な内容が記されている。読み物ではなくて学術資料である。
著者没後に、残された原稿を書物としてまとめたもの(昭和44年刊)というだけあって読みやすいとは言えないが、秋田マタギの習俗や怪異談、クマ(ツキノワ)狩りの作法、雪崩に関する記述などには興味をそそられる。
中でも、お産や煙草などは「産火」と呼ばれ不吉とされたことや、鉄鍋のツル越しに飯を盛ってはならない、寒中に豆を煎ってはならない等の禁忌は、迷信とも先人の戒めともつかないことだが、そうした厳格なしきたりが受け継がれたところに自然への畏敬が感じられることである。
なお、1994年には増補版も出版されており、いずれも古書で入手できるようである。
以下、メモ。
雪崩について
熊について
「マタギ」の語源について
雪崩について
- 寒30日の間は絶対に豆を煎ってはならない。豆のはじける響きで雪が裂け、雪崩が起きるからである。
- 鍋のツル越しに飯を盛ると雪崩に遭う。また鍋の蓋で握飯を握って持って行ってもいけない。
- あるマタギが山から4日も戻って来ないのでもしやと探してみると、途中に雪崩れた跡があって、その上にマタギの犬が座っていた。そこを掘ってみると果たして埋まって死んでいた。
- マタギは一生のうち一度は雪崩に遭遇するものである。
- 雪崩よけの呪文:
「山の神 頼む/此のヒラマエ(斜面)を/安穏に通らせ給え/アブラウンケ、ソワカ」
「マル(摩利)四天王/浮かすこと/此の場をお通りのうち/お待ち給えや/南無アブラウンケン、ソワカ(三唱)」
「南無財宝無量/寿岳仏(二万二千遍唱える)」など
※山の神は嫉妬深いというから、よその山で唱えると却ってたたるかも(^^;
熊について
- 熊は穴から穴へ移るときや春に穴から出るときに、足跡を見つけられないよう吹雪の来る前の日をよく知っていてその日に行動する。
- 熊は穴に入る時に後ろ向きに入ることがある。「出て行った穴と思わせるため」だという。
「マタギ」の語源について
- マタギは殺生をするような鬼の又鬼だから「又鬼」。
※登場するマタギたちはみなこの説。 - 山の峰を跨いで行く、山跨ぎだからマタギ。
- 山で果てるの意の「山立」の転訛。マタギの伝説上の総元締と言われる万字万三郎の肩書きに山立と書いてあるものがある。
- インドの屠殺業者マータンガの転。
※これは著者の考察:サンスクリット(インド経典)との関連から。
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