医療小説
「ナイチンゲールの沈黙」 海堂尊 (宝島社文庫)
ちょうどCTやMRIなどの画像診断を受けようかという時に読み始め、産婦人科の“たらい回し事件”や小児科医の過労死訴訟などのニュースが流れる中で読了。
医療の影ってあるよね…。医療への期待や批判という光が強すぎる面もあるかも知れないけど。
さて、その医療小説。
「チーム・バチスタの栄光」の直接的な続編(といってもストーリーは別物)です。
専門的知識や業界事情が下敷きになっているし、前作と同様キャラクターが活きているだけに面白くスリリングに読めます。
が。
書き込んで欲しいところで物足りず、ヘンなところで筆が滑る。なんか読み手であるオレの外側で勝手にお話が躍っているみたいで、戸惑うことしばし。
事件も教訓(「間違いを隠してはならない」)のための事件であり、謎は謎解きのための謎、舞台装置も荒唐無稽、とくればもうオレにはムリ、ついて行けません。
「チーム・バチスタ」では、その圧倒的な構成力に脱帽して敢えて書かなかったけど、この作ではそのネガティブな部分をよけいに感じてしまった。残念ですた。
中で白血病の女の子の一途な台詞だけが、混沌の中にさす寂光のように心に残りました。
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