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2008/07/01 火

いやぁ、野球って本当に…

入ってくと面白いですね、と。

(以下長文)
プロ野球の一流たち (講談社現代新書 1941) (講談社現代新書 1941)
プロ野球の一流たち」 二宮清順 (講談社現代新書)

著者が「本」「現代」といった雑誌に寄せた原稿をまとめた本。
もともとワンテーマではない(と思われる)んだけど、なかなかいいストーリーにまとまっている。

冒頭は「野村克也の配球学」から始まる。
この本を買ったのは偶然本屋で見つけたからなんだけど、ちょうど前に読んだ「野村ノート」を土台として、その後日談みたいな感じだ。
次いで、中西太の「育てる打撃論」、稲尾和久の回顧録、大野豊のピッチング論、東尾・土井の選手観…とインタビューを中心に記事がつづられる。
通底しているのは、「考える」ことの重要性である。ピッチャーなら指先の感覚を、バッターなら腰の回転を…うんぬん。そして松坂はなぜよく打たれるか、清原はなぜタイトルを取れないか、というところへ収斂していく。
渡辺俊介、山崎武司、工藤、古田…とインタビューは続く。いずれも考えて優れた技術を身につけていった者たちの箴言の数々。

いやぁ、野球のなんとコクのあることよ。

ところが中盤から、少し暗雲がたちこめる。
大リーグへの移籍問題。その大リーグの利益誘導優先主義(WBCの歪んだ運営)、パワー偏重ゆえの薬物問題。
また日本球界の「裏金」問題と、「特待生」を巡る高野連の迷走と横暴。そしていつまで経っても経営努力が足りない球団。

いやぁ、野球の周辺にうごめく者たちのなんとウロンなことよ。

だが、著者は一片の救いを投じてこの本をまとめる。
日本の独立リーグ、特に四国・九州の「アイランドリーグ」のチャレンジである。脚光はないかも知れないが、本当の野球好きたちがそこにはいる。

ただ、これを見殺しにしてはいけない。

プロとアマ、地域と中央の人的・経済的な環流システムさえきちんとできれば(つまり既存プロ球団や高野連だけがオイシイ思いをするという歪んだ構造さえ打破できれば)、日本の野球はもっとよくなる…と著者は暗示する。※1

一流のプレイヤーたちが面白くしてきた野球をつまらなくしている、周辺の有象無象。そこを整理すれば、まだまだ可能性はあるということだ。

冒頭の引用において、野村克也氏のいわく:

「一球投げたら休む、また一球投げたら休む。こんな休憩の多いスポーツ、他にはないですよ」
「休憩が多いということは、要するに“考えろよ”ということなんですよ。ピッチャーもキャッチャーも一球投げたら考える。頭を使ったチームのほうが強いということですよ。それが野球というスポーツの本質ですよ」

元祖アメリカも忘れてしまったその“本質”が、日本の野球には残って…いや進化して存在する。

いやぁ、野球のなんと面白いことよ。


※1 アイランドリーグのチャレンジ

四国・九州アイランドリーグも甲信越のBCリーグも、Webサイトはけっこう立派である。ローコストでの顧客接点なんだからここをしっかりやるのは当然、といってしまえばそれまでだが、いい姿勢ではないだろうか。

アイランドリーグのトップページを見ると、6/25の鳥栖の試合結果が載っていて、動員数188人、とある。ありゃー。これは残念な数字だね。
見に行ったら、きっと面白いと思うんだけど。

つーか北海道にもあるといいよね。

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