二宮金次郎は何が偉かったのか?
「二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―人口減少社会の成長戦略」 猪瀬直樹 (文春文庫)
二宮金次郎は、仕事の合間も、寸暇を惜しんで勉強しました。で、偉い人になりました。以上。
…というのが、(オレも含めて)多くの人の二宮金次郎に関する知識のすべてではないだろうか?
ところが、この本を読むと次々に目からウロコが落ちる。
金次郎は、身の丈6尺(約180cm)を超える大男だった。
薪は、苦労してかき集めてホソボソと売り歩く、という商品ではなかった。(燃料として高利益商品であり、金次郎自身、「山を自ら所有して」調達した)
人口の流出で荒廃した地方の領地に赴き、その財政を独自に(実践から)培った金融理論をもって建て直した。
さらに、物語は時代を超えて現代へと飛ぶ。
金次郎の時代…江戸時代後期は、幕府・藩の財政は逼迫、経済が停滞し、とくに地方で人口も減少傾向にあった。つまり、現代の社会情勢に重なる。金次郎が行った(行おうとした)財務政策の基本的考えは、実は今こそ使えるのではないか。
土木土建に偏重しているカネや人を農業に配置し直し、江戸時代にそうであったように「総合産業」として発展振興してはどうか。
と、「改革」の真の旗手ともいうべき著者が料理するとこのようになる。
実に今の日本には無駄・無理が横行しているが、最大の無駄は、既得権益にしがみつく「抵抗勢力」であろうかと思われる。
この抵抗勢力が頑張っている間は、ニポンがいかなる危機的状況にあろうとも、またいかに優れた実践的指針があろうとダメなのだが、この本が示唆するように一概に人口減少→生産性減退→暗い未来、ではないという点には夢が…とまでは行かないがいくぶんかの救いが感じられる。
日本の戦後は役人を食わすためにあった、とオレなんかは考えるんだけども、少なくともバブル以降についてはその考えが正しいことも教えてくれた。
好著。
なお、手っ取り早くエッセンスに触れてみたい方にはこんなページもあり。
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