時空の旅人
「銀の三角」 萩尾望都 (早川書房)
世界に悪影響を及ぼしている「時空の歪み」の原因を取り除くべく、遠い「未来」からやってきた美貌の楽士ラグトーリン。これが縦軸とすると、その存在に「変動」を察知し、排除(暗殺)しようとするエージェント、マーリンが横軸。
この2軸が交わるところで事件が起こる。
ところがその交点はひとつではない。時空はひとつではなく、舞台は過去と未来、そして多重の世界を行き来し、物語も妖しく揺れ動いている。
(単純なタイムマシン的な時空観ではなく、虚数空間~多重宇宙といった新しい物理学の成果を踏まえているモヨウ)
1982年の作。
オレ、リアルタイムでこの本を持っていたが、いつしか手放してしまった。
ある時、なにかのきっかけで、また無性に読みたくなった。
当時読んで意味はよくわからなかったが、その空気感というか浮遊感というかが一種まだるっこしい幻影として深く沈殿していたのだ。
そんな気分が、なにかの拍子に呼び覚まされて、少しずつ膨らんでいった。
2年くらいその無性が続いたところで、先日ついに思い切ってポチした。
今回はそんなに難解とは感じなかった。
ラグトーリンの中性的な魅力とも相まって、実に味わい深く読んだ。
3度くらい読んだ。(まんが用の集中力はあるらしい)
古本市場では定価以上になっている本のひとつだが、買ってよかった。
こうして時間を経て呼び覚まされて、読んでまたガッカリしない。見事なお話である。
こんな不可思議なお話を、これほどの構成力で描ける作家、やはり萩尾望都なのである。
*
ところで萩尾望都といえば、「ポーの一族」。
その書評にまた凄いのがある。例の松岡正剛氏。
ああ、萩尾望都センセイ!
Comments
野球観戦三昧です(MLBと高校)
こちらでこの本(つーか、漫画)のタイトルを拝見するとは!
でも私も2年前にbook-●ffに出しました。
Posted by 皿 at 2007/08/20 12:15
この本、2年間巡りめぐって皿さんの蔵書だったりしてねw。
Posted by H氏 at 2007/08/20 12:49